初めに | |
2005年6月1日より施行された「阿法」事「外来法」により、“キョクトウサソリ科=Buthus科=Buthidae”については、許可を取って飼育していても繁殖は禁止されております。 どんな理由にしろ繁殖させてはいけません。詳細は『特定外来と蠍』の項を参照して下さい。 尚、文中に使用する写真には“キョクトウサソリ科=Buthus科=Buthidae”が多々出て来ますが、2005年6月以前の物ですのであしからず。 後は、秋山氏著、私写真提供の蟲マニア垂涎の本『毒虫の飼育・繁殖マニュアル』を読んで下さい。 以上 ........... .......... ......... ........ ....... ...... ..... .... ... .. . と言うのも何なので、私の私見等も含めて書いてみようと思います。 基本的には、簡単です、雌雄を同じ容器に入れて雄が雌を『ダンス』に誘って雌が応じれば終わり。 その後、上手く行っていれば数ヶ月〜数年後無事出産、雌親の背中に乗るベビーを拝む事が出来るのです。 その後、ベビーを育てられるかどうかは、貴方のやる気と根気次第。いかに飽きずにまめに世話を出来るかに掛かってきます。 しかし、此で説明が終わりでは何なので、少々写真等も加えて説明を下記に記すとします。 |
準備 | |||||||||||
やること自体は大したことはありません。 やる気のある雌雄を、少し広めのケージに移して放置するだけ。 ケージは適当な床材を敷いて、適当な基質を入れておくだけ。 個体の準備 良く太らせておきましょう。 雌雄供に、事前に十分に餌と水を与え、良く太らせておくと良いような気がします。 特に、雄。 此が重要だと思います。雄は太り具合が解りにくいです。雌の様に縦横高さ全ての方向に太らない為です。しかし、雄も餌を与えれば十分太ります。横にこそ広がりませんが、体高に厚みが増し前腹部横の柔らかい部分の面積が広がります(痩せていると、腹甲板と背甲板が殆ど接触している)。そして、縦にも伸び背甲板の繋ぎ目が広がります。
さて、太らせておく理由ですが、痩せている雄は雌を餌と認識する場合が有ります。雌は乗り気なのに雄の方がいきなり針を突き立てるなんて事も有りますので、要注意です。 そして、もう一つの理由が精筴が上手く出ない。此は栄養状態の他に、老齢個体も同様です。この状況に陥ると、雌に対して何度も交接を試みるのですが、上手くいかず何度も何度も同じ動作を永遠と繰り返します。そのような場合、何度頑張っても結果は失敗ですので、諦めて離しましょう。 それと、当然ながら成熟個体を使用する様に。WC ADならすぐに使えると思いますが、CBなら脱皮回数を数えて、WC幼体なら脱皮の都度雌雄判定を行ってはっきりした段階で。 さらに、最終脱皮後すぐに使ってもどうもかかりが悪い様な気がするので、私は大抵半年程十分に栄養を取らせてから使う様にしています。 。 容器 広めの物を。 普通は成体の飼育でもSサイズプラケで大丈夫ですが、交接に使う容器は大きめの物を使います。
交接の際は、結構広く動き回ります。最低でも体長の3倍、亦は、交接させる雌雄の体長を足して1.5倍した数値の程度の広さを用意して上げます。 ケージの大きさ等は、個体の大きさと見比べて種類に合った物を使用する事をお勧めします。 あまり広いと、お互いを認識するのに時間がかかり、あまりに狭いと、やる気が無かったり気が合わないと即喧嘩にになるので、適当な大きさを見繕ってあげるように。 基質 必ずしも必要な物ではないが、有ると大抵この上で交接します。目を離した空きに交接をしてしまった場合等、精筴が基質にくっついているので確認が容易です。 まぁ、精筴が無くてもくっついていた雌雄が離ればなれになっていれば、成功の可否が別として無事終了なわけですが。
床材 入れても入れなくても構わないと思いますが、入れた方が良いでしょう。 基本的には、多湿系種は湿らせて、乾燥系種乾いた床材で良いと思います。基質と他の部分の高さを均一にする為に、雄が雌を連れ回す際の踏ん張りを効くようにする為にも、私は入れています。 種類は、普段自分で使用してる物で良いでしょう。使い慣れているでしょうし、大抵普段使っている物は予備があるでしょうから、直ぐに用意出来ますし。 |
交接させる | |
さて、準備が整いましたら、交接用ケージへ雌雄を入れます。この時、当然ながら離れた場所へ入れましょう。落ち着く前の出会い頭は一番危険です。取っ組み合いになってお互いを攻撃し始めたら元も子もないので、なるべく端と端へそうっと入れる様にします。 しばらくはそのまま様子を伺います。お互いが静かに出会う様にします。静かに出会っても取っ組み合いになる事が有りますので、その際はすぐに互いを離し、そのペアリングはとりあえず止めておくのが無難です。 良く見ていると、どちらがやる気がなく攻撃的かは判ると思います。ですので、その際は雌雄どちらかを交換する事で上手くいく場合が有りますから、入れた後は放置ではなく、よく観察しておく様に。 出会いが上手く行くと、しばらく雄が雌をつかんで引っ張り回す様に移動します。 途中向き合ったり、また引っ張り回したりと言うのをしばらく続けた後、雄が気に入った場所へ誘導し(大抵、鉢欠け等の基質の上)、精莢を出し雌をその上に来る様に誘います。上手く精莢が出ていれば、雌を誘導後雌雄はその場をパッと離れ、お互い離れてゆきます。 が、栄養状態が悪いのか、既に老成なのか精莢が出ない事が有ります。その場合、雄が永遠と腹部を基質へこすりつける様な行動を繰り返します。雌もそれに併せて、ダンスの様な形で前後に運動させられます。体力を無駄に消耗させないためにも、ある程度で見切りをつけましょう。 基本的には、精莢は一回で出ますので、繰り返す様なら出ないと思って雄を取り替えるのが無難です。 上手く行っていれば、数ヶ月から1年後出産に至るわけです。 尚、取っ組み合いになり、お互いを刺し合った場合ですが、「H.spadix」はその後も普通に生存していましたが、「A.australis」に関しては、深く刺された方は死んでしまいました。 交接させる際は、長いピンセットを持って直ぐにでもお互いを引き離せる様、万全の準備をしておく事をお勧めします。 |
出産迄〜出産後 | |
雌は交接していなくても、お腹が張って大きいですが(飼育の項、雌雄の太り方の違い参照)、上手く受精していると腹部側面に白いぶつぶつの様な物が透けて見えてきます。これが見え始めると出産が近いので、落ち着ける環境を整えて静観しましょう。 この時、餌は食べるだけ与え、水飲みは常設し飲み水を切らさない様に。 種類にもよると思いますが、現状入手可能な種類の殆どがこの期間の低温乾燥が悪影響を及ぼす様に思われます。 割合低温気味を好む、南米系「Hadruroides」等を除けば、気温は30度前後で、乾燥種でも湿度を上げておく方が無難と思われます。 シェルター等は無くても産んでくれますが、刺激を与えすぎると子食いに発展する事が有るため、出産後は特に静観を決め込む事をお勧めします。 産んでいる最中の刺激はもっとも嫌いますので、もし途中で気がついても、完全に産み終わるまではケースを動かさない、ストロボを焚かない等の配慮を。 完全に産み終われば、格段に子食いの確率は減りますが、それでもしばらくは触らぬ神に祟り無しと決め込んで、あまり刺激しない様に飲み水の補給程度にしておべきかと思います。 写真撮影可能な事も多いですが、リスクは高いと思っておいてください。 ぶよぶよの幼体は、10日〜2週間程度で一度目の脱皮をし、親の背中から降りて歩き回る様になります。まだ、親に集っていますが、体が固まったあたりを見計らって個別飼育へ移行するのが無難です。 集団飼育は、エンペラー等では可能ですが、乾燥系種は大抵共食いに走ったりします。何より幼体が小型である事が多く、エンペラーの様に冷凍ピンクマウスを放り込めば集って食べると言う様なわけにも行かず、多量の食べられるサイズのコオロギ等を入れる事になります。その際、餌と兄弟の見境が無くなったり、餌の取り合いで喧嘩になったりで、結果死んだり食われたりしてしまいます。 ですので、エンペラーやチャグロ以外は、早々に個別飼育へ切り替えましょう。 |
その後 | |
出産後の雌について 経験上、多くの種類が一度の交接で2度出産出来る様に思われます。 これは、一度目の出産で産みきれなかったのか、貯精により二度目の受精が出来るのかは現状定かではありません。 しかし、一度出産してもあまり痩せない場合、かなりの確率で二度目の出産に至ります。 逆に出産後、“ぺしゃんこ”になった場合(だいたい二度目)、その後立ち直って再度出産出来るかどうかは、かなり微妙です。この場合、餌を採りますがあまり食べなかったり、水も以前より飲まなかったり、食べても全く太らないと言った症状がみられます。そして、私はこの状態から再度出産へこぎ着けた事は有りません。 もしかすると、それが寿命、又は卵数限界なのかもしれません。 所謂長寿命種であると言われる、Hadrurus属(デザートヘアリー)やH.troglodytes(サウスアフリカンフラットロック)は上記出産回数二回は当てはまらないと思われます。実際、デザートヘアリーは繁殖データが無いのですが、フラットロックは数年にわたり出産し続けると言う話しも聞いた事があります。 しかし、フラットロックは出産数が少なく、数度に分けて産み続ける事により生存率を上げているだけで、トータルでの保有卵数はだいたい一定なのかもしれません。 それを、二度で産みきるか、もっと細かく産み分けるかの差とも考えられます。 どちらにしても、産後の肥立ちは大変重要な事に代わりは有りません。 例え出産後どのような状況になっても、餌と水分を十分に与える事を推奨します。 私は正直あまり管理の良い飼育者ではありません。ですので、もしかすると三度目、四度目の出産チャンスを自ら潰していたのかもしれません。 但し、出産後再度太っているが、脇腹に白いぶつぶつが見えない場合は、ただ単に蓄え精子が無いという事も考えられます。 多くの種類で、貯精による二度目出産は以外に短い間隔で生まれる事が多いので、おかしいと思ったら再度交接させてみて下さい。 蠍の繁殖はまだまだ未知の部分が多く、一つ一つが手探りである事は否めません。 皆さんの挑戦がすべて貴重なデータとなります。 一種でも多くCB個体のやりとりで済む様に、現在の様にサイテスII種で有るエンペラーが毎年毎年数万匹流通するのではなく、数年に一度血統補充のために少数輸入される程度で済む様な状況を作って行くのも、我々飼育者の努めでは無いでしょうか。 |
Ver1.01 |
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