初めに

2005年6月1日より施行される「外来法」と蠍について、少々勘違いや間違った知識を鵜呑み にしている方々が多いように見受けられる為、簡単に誰でも解りそうな感じで記する事にする。

尚、「特定外来法」については、他のサイト等で勉強して下さい。其れについて此処で詳しく述べるつもりは有りません。
サソリに関係する基本的な事を押さえて貰いたいだけの記述です。
其れと私の愚痴です。

・環境省の特定外来Page
此処を読めば99%解るはずです。残りの1%は、“キョクトウサソリ科=Buthus科=Buthidae”についてなので、此処で属名と代表的な種を勉 強してください。


主旨と私見

生物多様性と生態系を維持する為に外国産生物を帰化させないと言うのが本来である。

正直、ブラックバスや帰化哺乳類問題が無ければ、此処までの騒動にならなかったであろう法律。
亦、暇なマスコミ共が『セアカゴケグモ』騒動を、そして生き物の飼育という事を余りに軽んじ、捨てない・逃がさない・逃げられないと言う最低限の原則 を守らなかった一部の人々によって被害が拡大した法律でもある。

その生態系等の“等”に人間に対する致死性と言う「あんぽんたん」な概念を盛り込む事によって、帰化実績は有れど其れによって生態系が攪乱された実績のな い後家蜘蛛を入れ、憎らしい【岡山 Androctonus australis“逃げられ”騒動】で、一躍目の敵にされた蠍を組み込んだのである。

そもそも、生態系からとうの昔にはみ出してしまった人間を、自然の摂理に入れるのが間違っている訳で、人間が居なければ此処まで急激な環境変化による生態 系の攪乱も起こらなかったのです。
ましてや蠍等は、帰化実績が無いにもかかわらず 【危険だから】 と言う良く解らない理由により規制対象となりました。

本来、その国に居ない生き物を飼育する(在留国の生き物でもそうですが)と言うのは人間のエゴで有り、本来推奨されるべき趣味ではないと思っては居ま す。

まぁ、 この辺は語り始めるときりがないし、自分の趣味を否定する事になるので、この辺で。
詳しくは、検索を掛けると山のように出て来ますので、その辺で勉強してください。
この法律は決して、生き物の飼育を趣味としている人々の首を閉める為に有るのではなく、日本の稀少な生態系をこれ以上国外生物によって悪化させない事が目 的で有ると言う事を。


間違った知識の例

私が此を書くきっかけとなった例文を此処に上げます。正直唖然としました。
いい加減な情報を自信持って掲載してはいけません。

其の1
全部種ではないですが、殆どのサソリが飼えなくなりま す。ダイオウも飼えなくなるのでお早めにw
解説: 何をどう言う事を持ってして、Scorpionidae (コガネサソリ科)で有るPandinus imperatorの飼育が出来なくなると言っているのか理解に苦しみます。
私も“買えなくなる”に関しては、若干危惧する所がありますが(後ほど記述)、上記抜粋させて頂いたサイトの中身を見る限り、其処まで考えての発言ではな く、単に自分の知識の無さをひけらかしているだけのように思えます。
つまり、Scorpionidae(コガネサソリ科)で有るPandinus imperatorの輸入・販売・譲渡・飼育・繁殖・移動は規制を全く受けません。

其の2
輸入、販売、譲渡、移動、飼育、放逐はすべて禁止!
解説: 愚の骨頂です。「外来法」施行云々に関係なく、《放 逐》は絶対に行ってはならない行為です。
元々国内にいなかった生物を野に放すこと、国内の生物であっても飼育下に置かれた生物を再び野に放つ事は絶対に行っては行けません。
亦、国産生物を採集地以外に逃がす(採集地でも歓迎出来ません!)事も、国内生物による生態系破壊です。一度飼育下に置かれた生物は、他の飼育生物から病 原菌やウィルス等を移されて居ることも考えられます。例えその生物が発症しなくとも、自然下で他の生物へ感染し被害が出る事も考えなければなりません。
2004年一時期被害の拡大した“コイヘルペス”は熱帯魚の飼育水を捨てたりした事が原因ではないかと思われます。
輸入業者が各地方に感染魚を卸した事により、散逸的な発症になったと思うのです。

尚、上記は同一サイトで見られた無知識のひけらかしでした。
此ののサイトの管理者は、以前に秋山氏の掲示板で、全て秋山氏のサイト内に書いて有る事にも関わらず、其れを読みもしないで質問ばかりして居た教えて君状 態でした。
秋山氏が辟易しており見るに耐えなかったので、「少しは自分で調べて知識を身につけるようにし、調べて解らなかった事を聞きく様にしましょう」とやんわり 注意したら、他の掲示板へ行き「知らない事を聞いたら怒られる場合があるので注意しましょう」と書いて居たどうしようもない人です。
自ら調べて知識を身につけようとしない限り、知識は蓄えられません。自分で考えるから、思考力が身に付き、物事を“知る”事が出来るのです。
少々愚痴になってしまいました。最近余りに短絡的な思考の持ち主や、調べて考える事の出来ない人が多すぎるもので......では次へ。


其の3
毒の強い種類は人気がある。
解説: 此は、選定時に委員(だったかな?)から漏れた発言。
しかし、此は大きな間違いである。
確かに、強い毒性に魅力を感じる人も多いだろう。だが、蠍の場合其れが“Androctonus australisことイエローファットテイル”や“Parabuthus transvaalicusことジャイアントデスストーカー(サウズアフリカンジャイアントファットテイル)”の人気を生んだのではない。
その一番の人気の秘密は、あの姿である。ゴツゴツとした尾の太さ、所謂“ガンダ○ちっく”な所に因る所が大きいのだ。容姿が機械的で格好良いので ある。
健全な男児で有れば、クワガタやカブトムシ、またはザリガニ等、強くて格好良い生き物が好きだったはずだ。其れを忘れて、ただ毒が強いから等と言 うのは、男子の本懐を失い男性更年期も当に過ぎさりし、後は死ぬのを待つだけになった漏水....基、老衰爺の発言である。
健康である限り、男は終生格好良い物が好きなはずだ。
其れの証拠に、“Androctonus amoreuxi”は容姿が他のButhidaeと似ており(特にButhus属やLeiurus属)、蠍の花形Androctonus属にも係わらず、 大変不人気で有った事は記憶に新しい。

だいたい、昆虫以外の無脊椎動物が、爬虫両生類等と一緒に審議されるというのもおかしい話なのだ。
爬虫両生類の委員からは、蟲は昆虫でやって欲しかったという意見まで出たとか。
残念ながら、とうていまじめな討論が行われたとも思えず、大変残念な結果に終わったわけである。
確かに、「特定外来」についての意見募集(通称パブコメ)も行っていた、が真面目に文章を書いて資料を探していたら、普通より少々多忙と思われる私の 仕事上、期日に何ぞ間に合う訳がない。
だいたい、こういった物は下手に書くと心証をより悪くするわけで、きちんと論理的に文章を書く必要がある。そんな物を、普通のサラリーマンだってそうそう 仕事をこなしながら書き上げられるはずもないだろうに
社会人は仕事だけではないのだよ。仕事をしていく上では資格も必要になるし、資格を取る為には勉強をしなければならない。特に私のような設備屋は特に資格 が多い。
ちょうど仕事が多い時期と募集の時期が重なり、調べ事など殆ど出来なかった。何せ、肝心の飼育生物の世話までかなり疎かになったくらいだ。
大事な飼育生物の世話が疎かになり、死なせてしまっては、本末転倒で有る(実際なった.....)。

まぁ、その時多少調べた知識などを元に、此を書く事が出来ている訳なのですが。


蠍に絡む基礎知識(規制対象種について)

まず此の法律の施行に因って制限を受けるのは、キョクトウサソリ科=Buthus科= Buthidaeのみで有ると言う事。
此を理解していない人が余りに多い。

キョクトウサソリ科=Buthus科=Buthidaeは現在(2005年5月)80属661種(亜種除く)からなる蠍最大のグループで有り、局地と ニュージーランドを除く温帯〜熱帯〜砂漠地域に至る様々な環境適応し、広範囲に生息している。
以下に80属を列挙してみる。
Afroisometrus

Akaranocharmus

Akentrobuthus

Alayotityus
Ananteris

Androctonus

Anomalobuthus

Apistobuthus
Australobuthus

Babycurus

Baloorthochirus

Birulatus
Buthacus

Butheoloides

Butheolus

Buthiscus
Buthoscorpio

Buthus

Centruroides

Charmus
Cicileus

Compsobuthus

Congobuthus

Darchenia
Egyptobuthus

Grosphus

Hemibuthus

Hemilychas
Himalayotityobuthus

Hottentotta

Iranobuthus

Isometroides
Isometrus

Karasbergia

Kraepelinia

Lanzatus
Leiurus

Liobuthus

Lissothus

Lychas
Lychasioides

Mesobuthus

Mesotityus

Microananteris
Microbuthus

Microtityus

Neobuthus

Neogrosphus
Odontobuthus

Odonturus

Orthochiroides

Orthochirus
Parabuthus

Paraorthochirus

Pectinibuthus

Plesiobuthus
Polisius

Psammobuthus

Pseudolissothus

Pseudolychas
Pseudouroplectes

Razianus

Rhopalurus

Sabinebuthus
Sassandiothus

Simonoides

Somalibuthus

Somalicharmus
Thaicharmus

Tityobuthus

Tityopsis

Tityus
Troglorhopalurus

Troglotityobuthus

Uroplectes

Uroplectoides
Vachoniolus

Vachonus

Zabius


注1 : 何か抜けて79属ですねぇ.....まぁ気にしない気にしない.....どうも最近1属抹消された様です。
注2 : 青字は一種しか居ない属。
注3 : 赤字は国内メジャー所
注4 : 太字は日本在来種含む属

見ての通り、1種しか居ない属が36属有ります。古い分類がそのまま適用されているのもあり、今後再編や編入、シノニム抹消等の変更が予想されます。科単 位で見ても、ちょくちょく変更されていますので、最新の情報を知りたい方は常に海外のサイト等をまめにチェックする事をお勧めします。
上記属が、今回の規制対象になります。(Isometrus maculatus<マダラサソリ>を除く)
上記以外は、輸入・販売・譲渡・飼育・繁殖・移動は全く規制を受けません。
この辺を理解していない人が多いのです。Buthidaeに含まれる属が何であるかなど、ネットで検索すれば直ぐに解るはずです。調べもしないで間違った 知識を広めるのは止めましょう。


では赤字の中から、代表的な種等を表記する。
属銘 種名 通称 説明他
Androctonus australis イエローファットテイル 代 表的尾太蠍。過去に、“amoreuxi” “crassicauda ”も導入されていると思うが、国内に生き残っている固体は居ないであろう程昔の話である。
尚、“bicolor”は所謂“旧デスストーカ”である。
bicolor シナイデザート・シナイブラック
Babycurus jacksoni レッドバーク・ラス ティーレッド タンザニア便で入荷していたサソリ。但し、タンザニ アにはよく似た種が他に同族の“wituensis”、同じButhidaeの“Odontorus dentatus”が居る。
尚、入荷して居たのが此の3種のうちどれかなのは、個体個体を詳しく鑑定する必要があるが、虫眼鏡が必要な世界となる。
尚、“jacksoni”と“wituensis”の判別法は不明。
過去に“gigas”も国内に導入されている。
Buthus occitanus
Buthidaeの代表属と言っても良い属。 “occitanus”が過去に入荷している。
エジプシャンイエロー・サハラスムース等の名前で導入されているのは、恐らく同じButhidaeの“Buthacus arenicola”であると思われる。
Centruroides
フロリダバーク 此 と言って特徴が無い細身の蠍で、北米から南米に掛けての地域から来れば、こ奴らと思っておけば良いでしょう。
○○バークと名付けられている事が多い。

セントラルアメリカンブラック

テキサスストライプ
Hottentotta eminii
アフリカから入ってくる小〜中型乾燥系で、此と言って特 徴の無い連中はホッテンと思っておけば良いでしょう。
尚“eminii”は単為生殖種です。
Leiurus quinquestriatus デスストーカー 所謂本物。2002年もう一種 “jordanensis”が登録されていますが、其れまでは独りぼっちの属でした。容姿の似た種が同科には多い。
Parabuthus liosoma イエローシックテール
ブラックティップファットテイル等
ア ンドロと人気を二分する尾太蠍の一族。“transvaalicus ”は一時期大量に入荷していたが、現地シッパーが仕事を辞めてしまった為、2004年後半から入荷が無くなった。
実は大して毒は強くないらしいが、量の多さと飛ばしてくるので多少厄介。
他には“capensis”、”heterurus“、“pallidus”が導入されていると思われる。
が、“capensis”、“mossambicensis”、“pallidus”は正直産地不明だと見分けが付きません。
mossambicensis オレンジジャイアントデスストーカー
transvaalicus ジャイアントデスストーカー
サウスアフリカンジャイアントファットテイル
こんな所でしょうか。
因みに、“Isometrus maculatus”はマダラサソリで国内に生息しています。Buthidae唯一の規制除外種です。


規制されると?

・『輸入・販売・譲渡・ 飼育・繁殖・移動』の禁止
此が基本事項。ですので、法の施行以降(2005年6月1日より)の入手は不可能になります。

・現在飼育中の個体は?
一定の条件を満たした飼育施設で、特別許可を受けて飼育しなければなりません。
但し、此処で重要なのは【特別】と言う事で、趣味での飼育(所謂ペット)としての飼育は、新規に許可されません。
詳細は
『飼うための許可の条件や特定飼養等施設の強度や構造など具体的な内容につきましては、現在整理中ですので、今しばらくお待ちください。』
の様なコメントが環境省のwebサイトに出ていますので、もう少々待たれよ。 って、後1ヶ月無いのだがな.......

・増えちゃった
趣味での飼育(所謂ペット)は一代限りと決められております。おそらく、飼いきれなくなった時と同様『殺処分』しなければなりません。

・他人にあげたい、もらいたい
譲渡と移動が禁止ですので、出来ません。
但し、許可を受けている人同士では譲渡が可能です。
此の場合、移動には抵触しないという事です。

・キョクトウサソリ科=Buthus科=Buthidae以外の蠍の輸 入
キョクトウサソリ科=Buthus科=Buthidaeではないと言う証明書が必要だそうなのですが、詳細は未だ未定のようです。
此の事が『間違った知識の例』の「其の1」で私が危惧している“買えなくなる”と言う所です。
証明書がどの程度の書類が必要なのかという事と、誰が一体《Not Buthidae》を判断するのかと言う事です。

2005/05/28追記
環境省サイトより抜粋
種類名証明書」については、基本的に輸出した国の政府機関が発行するものとなりますが、国によっては政府機関 以外の機関でも種類名証明書を発行することが可能です。
と言っても、 ほんの一部の国で我らに関係の有りそうな国は殆ど無いです。
各国の国内法に基づく野生動物の輸出許可証で種名と数量が記載されているもの
主な輸入国のどれくらいに、こういった書類が有るのか疑問です。
ワシントン条約(CITES)に基づく輸出許可証で種名と数量が記載されているもの
此のおかげでPandinus imperatoは可能です。しかし、サイテス種の輸出枠が数万頭って言うのもちょっと......
植物防疫法第6条の輸出国政府機関により発行された指定検疫物の検査証明書で種名と数量が記載されているもの
蠍には無縁そうです。
感染症予防法第55条の輸出国政府機関により発行された指定動物に係る証明書で種名と数量が記載されているもの
蠍に関係するかどうか微妙です。余り関係ない気もします。
と言うかですね、輸入状態を考えると上記書類記入が大変難しいのが実情。何故かというと、輸入業者のListはブラックスコーピオンやレッドスコーピオン等の表記......書類上は全てスコーピオン。
そんな状況ですので、例え書類が有ったとしても『種名が記載』と言うのは大変難しい事項なのです。
なので、今後は【キョクトウサソリ科=Buthus科=Buthidae】以外の蠍の輸入自体難しくなるのです。アメリカ便等は未だ良いでしょうが、アフリカ便等はかなり難しくなるでしょう。
後は、輸入業者の頑張り次第と言う事で。
それから、輸入出来たとしても、当然書類を作成する手間がかかるわけですから、若干の価格高騰はやむを得ないでしょう。


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